構造構成主義から考える整骨院経営

こんばんは、整骨院自費導入アカデミー主宰の松村です。

日本の心理学者、哲学者である西條剛央先生の「構造構成主義」を知ってから約1年。
先日、西條先生が「チームの力」という書籍を発刊され、すぐに購入して読んでみました。
西條先生は、東日本大震災の時に、日本最大級のボランティア団体を作り、運営されていたのですが、その運営に役立てたのが構造構成主義でした。
その構造構成主義から、整骨院の経営について考えていこうと思います。

構造構成主義とは

難しい説明はかなり長くなりますし、いわゆる学問書レベルの話になるのでここでは書きません。
「構造構成主義とはなにか」西條剛央著(2005年)205ページに、

構造構成主義は「原理」(考え方の筋道)であり、原理は、より根底的な原理であるほど多様な関心に応じて多様な側面(機能)を現わす。

と書いてます。
では、原理とは一体なんなのでしょうか?

原理とは

「チームの力」西條剛央著(2015年)の111ページに、

原理とは、言われてみれば当たり前のよいに感じるものであり、それに沿えば必ずうまくいくというものではないが、それから踏み外したときには確実に失敗するという類のものなのだ。

と書かれています。 
原理とは、自身の経験からくる理論等ではなく、もっと普遍的に洞察できる「視点」として活用できるものであるということになります。

 

 

では、この構造構成主義という「原理」を用いて、整骨院経営を少し検証していきたいと思います。

 

方法の原理

構造構成主義において、方法とは

「特定の状況において使われる、目的を達成する手段」

と定義されています。

最近は、治療にしろ経営にしろノウハウ系のセミナーやDVD、書籍が多く出回っているのですが、この定義からすると「特定の状況において」ということなので、絶対に上手くいくノウハウは存在しないということになります。
また、この定義をベースに考えると、方法は目的を達成する手段であるので、目的が設定されていない場合は方法自体も生まれてきませんし、目的が間違ったところにあれば、それは必ず間違った方法を生み出してしまうということになります。この話は後述するとして、この方法の原理だけに則って、色々と検証していきたいと思います。

治療法について

世の中には色々な治療法があります。治療法とはその名の通り「方法」です。
ということは、何を目的とするのかで選択する治療法も変わってくるということになります。
また、状況に応じて治療法を選択する必要があるということになります。

治療のマニュアル化の愚

方法の原理に当てはめると、治療をマニュアル化すること自体が原理から外れてしまっているということが理解できると思います。
治療とは、患者さんを治すという目的のために、状況に応じて選択すべき手段であるわけですので、患者さんが違う人ならもちろん、同じ人であっても、その日その時の状況に応じて常に変化していかなければならないということになります。
先述したように、原理とはそれに沿えば必ずうまくいくというものではないが、踏み外せば確実に失敗するというものなので、治療をマニュアル化している時点で、原理を踏み外しているので、必ず失敗するということになるのです。
ただ、治療をマニュアル化するのには理由があるのですが、それは後述させていただきます。

経営方法について

これも現在たくさんの情報が出回っておりますが、結局のところ、「月商〇〇万円のノウハウ」的なものは、その先生がその院で結果を出した一方法であるにすぎず、それを実践したからと言って必ずしも実践した他の人が月商〇〇万円達成できるかどうかはわからない、もしくは、ほとんどの場合無理と言える代物であると言える可能性があるわけです。
ただ、この「月商〇〇万円」というのは、方法の原理という以前に問題があるのです。
方法とは、「特定の状況において使われる、目的を達成する手段」ですので、目的があってこその方法ということが言えます。
1人院を経営するにしろ、スタッフを抱えて院を経営するにしろ、経営方法を生み出すためには必ず目的が必要になってくるわけです。
特にスタッフを雇用している場合は、チームで院をやっていくわけですので、特に共通の目的が必要になってくるのです。院を経営する目的は、経営理念になってくるのではないでしょうか?

理念とは

「チームの力」西條剛央著(2015年)で、理念の本質を書かれているので整骨院経営に置き換えて要約してみました。

整骨院における理念

①整骨院が大切にする価値観を表明したもの
②整骨院が目指すべき方向性や足並みをそろえるための「整骨院のコンパス」
③それが失われたら整骨院そのものが存在している意味がないというほどに最も堅持するものであり、それに照らして意思決定をすべき「整骨院の憲法」でもある

と、こんな感じになります。
 

整骨院内のオペレーション、治療等、整骨院経営において必要な方法すべては、この理念によって決められていくということになります。
ですので、整骨院の院長は、その理念を実現するためにリーダーシップを持ってやっていかなければならないということになります。
「チームの力」西條剛央著(2015年)内では、リーダーシップの本質についても書かれていました。

リーダーシップとは

「チームの力」西條剛央著(2015年)68〜69ページに

リーダーシップとは、特定の状況下で、チームを目的の実現に導く方法であった。そして状況の真ん中には自分がいる。したがって、リーダーシップとは(1)特定の状況下で、(2)自分を活かして、(3)チームの目的を実現するための技能ということができる。これがリーダーシップのメタ方法論というべき考え方になる。

と書かれています。


整骨院経営におけるリーダーシップとは

整骨院経営をしていく上で、整骨院の理念を実現するために、今の自院のとりまく状況を客観的に把握し、柔軟に変化していくしなやかさを持つということではないでしょうか。

欲望で歪められた知性は”正しく”不正解を導く

「チームの力」西條剛央著(2015年)の73ページに、このように書かれています。
整骨院経営で言うならば、お金をたくさん稼ぐということだけで言うと、それは欲望であり、本来は「月商〇〇円」というのは、目標であって目的ではないわけですので、金を稼ぐことだけが目的になっている整骨院は、方法を決める判断の際に正しく不正解の回答を出すということになります。
以前、居酒屋甲子園をパクったイベントで、そこに出場した院のスタッフのインタビュー動画を見させていただいたことがありますが、当時まだ19歳のスタッフが「僕の目標はポルシェに乗ることです!」と公言していましたが、このスタッフは「ポルシェに乗るためには何をすればいいか」と考えるということになりますので、仕事で何をしても、それは正しく不正解を導くということになります。
整骨院経営をするなら、スタッフに対してもしっかりと理念をたたき込む必要があるということでしょう。また、先述した治療のマニュアル化も同様です。
なぜ治療をマニュアル化するのでしょうか?
それは、雇用したスタッフがなるべくすぐに患者を触り、生産性を高めたいからです。
そして平均化して誰が触っても同じということにして、自分が現場から離れたいからです。
本来、整骨院の理念というのは患者さんにフォーカスしているべきなのですが、そうでなく、経営者自身の欲望によって選択された方法であるから正しく間違いだということになります。
「治療をマニュアル化するなんて!」と思っている先生は、そういうところを理論的ではないにしろ感じるからこそ嫌悪感を感じるのではないでしょうか?
実際、方法の原理から言ってもマニュアル化された治療は、もはや治療とも言えないということはおわかりいただけることだと思います。
また、治療以外のマニュアルについても、状況は刻一刻と変化しているわけですから、ある程度不変のものはいいとしても常に変化し続けていかなければならないし、そのマニュアルの目的がお金を稼ぐという目的から生み出されたマニュアルであるならば、それはいかに患者さんのためと表面上は言っていたとしても、正しく不正解なマニュアルになってしまうということになります。

 

整骨院経営で一番重要なこと

「誠実さ」

「チームの力」西條剛央著(2015年)で、リーダーシップに最も重要な要素とは何かというところで書かれておりますが、私自身も強く共感しました。
整骨院経営で最も重要なことは「誠実さ」であると思います。
ドラッカーも、リーダーは誠実であらねばならない、部下はリーダーの失敗には寛容だが、不誠実であることは許さないものだと言っていると「チームの力」内でも紹介されております。
また、「チームの力」では、もうひとつ、ロバート・チャルディーニの仮説を紹介しています。
「よい影響力、悪い影響力」では

ある組織が、組織外に対して不誠実に振る舞う組織風土を黙認、もしくは奨励した場合、その不誠実さを苦痛に感じる組織内部のメンバーは組織を去ることを検討するはずです。そして実際に組織を去るまでは、苦痛とストレスを感じ続けることになります。
対照的に、不誠実さを物ともしないメンバーは組織に残るはずです。こうして最終的にこの組織は不正行為を何とも感じない人だらけになります。そして彼らは、この組織に対しても不正行為を働くと考えられます。

という仮説を立てました。
そしてその仮説を試すための実験を行ったところ、他のメンバーが不正をしていると信じ込まされたメンバーは、不正をしていると知らされていないメンバーよりも大幅に業績が劣っていた。
また、チームを選べる立場の人でも、不正があるチームでもまったく気にせず働ける人は、その人自身が不正を働く確率が50%も高かったとのこと。
仮説がきっちり実証されたということです。
整骨院経営でも全く同じですので、やはりスタッフに対しても、患者さんに対しても誠実でいないといけないのではないでしょうか?

バレなければ大丈夫

「チームの力」西條剛央著(2015年)81ページの「なぜ本心は伝わってしまうのか」で書かれておりますが、実際、「誠実なフリしてたら大丈夫やろ」と思う整骨院経営者もいるのではないでしょうか?
院を経営するのは自分が金持ちになりたいからということを隠しつつ、スタッフや患者さんの前では「すべては患者さまのために」と公言する。「金じゃないんだ」と公言する。
果たしてこれは通用するのでしょうか?
「チームの力」西條剛央著(2015年)内で紹介されているものを引用してみましょう。
マズローは、「完全なる経営」で

俳優のように演技をしてみせたところで、なかなか欺けるものではない。人間は意識レベル、無意識レベルにおいて、相手が演技していることや、行動によって示そうとしている気持ちが本心でないことを、どういうわけか見抜いてしまうのだ

と述べてます。
これには、私も「なるほど〜」と思いました。
というのも、過去に経験があるからなんですね。
私が過去に働いていたところで、保険の違法請求を堂々としているところがありました。
院長(経営者)は全く現場に出てこない。
たま〜にミナミのオネエチャンの治療の時だけ院に顔を出して白衣に着替え、クソ忙しいのにひとつのベッドを1時間以上も占拠して治療してる。
働いた当初は、院長もすごく良いこと言ってたし、患者さんも1日200人くらい来てたので、「さすが、こういう人が成功するんだな」と思って仕事を頑張っていました。
しかし、理由はわからないのですが、薄々「ん?何か違うぞ?」と思い始めるわけです。
そしてそういう感覚で働いていると、見えてはいけないものが見えてくる機会も増えるんですね。
「国保5部位(当時)25日、社保4部位20日、組合3部位15日」
これ、なんだかわかりますか?
事務員に傷病入力をさせていたのですが、その入力のマニュアルなんですね。
週1回通院しようが、2回通院しようが、国保の患者さんなら、5部位25日請求するという、まさに不正マニュアルなんですね。
疑惑が確信に変わってからは、その院でモチベーションなど上がるはずもなく、適当に理由をつけて退職しました。私の退職後に摘発されたようですが、あの頃、あの院で勤務していた時に内臓も壊しましたし、かなり苦痛な毎日をすごしておりました。
身をもってマズローさんの言うことと、ロバート・チャルディーニさんの仮説を実証しておりますね。
また、これが実証されているということは、誠実でなければいくらマネージメントのノウハウを実践しようがスタッフは辞めていくし、いくら問診のノウハウの勉強をしようが、治療法の勉強をしようが患者さんは継続通院してくれないということになるわけです。
ノウハウより前に、その人の資質がとても重要になってくるということになります。
結局は、自分自身を高めていかないことには、治療家としても経営者としても、成功は無いとも言えます。
 

自分を高める

どういう方法がいいという絶対的なものはないですが、構造構成主義ではないですが、私の好きな岩田松雄さんの「ブランド」という本に書かれていた方法を紹介させていただきます。

経営者の方なら、ジョハリの窓はご存知だと思います。

Johari_window

これですね。
岩田氏は「ブランド」で岩田流ジョハリの窓というものを書いております。
岩田流では、「自分にわかっている」「自分にわかっていない」という横軸がブランド、「他人にわかっている」「他人にわかっていない」という縦軸がミッションとすると書いております。
自分が一流になるためには、自己開示をし、他人から自分がどうかを指導していただき、第1の窓を広げていくべきだと書いてあります。
最近は「褒めて育てる」ということもありますが、自分で気がつかない長所を自覚することも重要ですが、自分に今何が足りないのかを自問自答し、人の意見を聞き入れ、どんどん自分自身を広げていくことでしか、自分を高めることはできないのだと思います。
そのためには、常に自分よりも上のレベルの人たちと、少し背伸びしてでも付き合っていく必要もあると言えます。

 

最後に

さて、かなり長くなりましたが、今回は構造構成主義という原理のほんの一部を引用して、整骨院経営とは?ということについての考察を書かせていただきました。
私を含め、理念を持ってしっかりやっている先生が、金儲け主義的な院経営を嫌悪する理由も、明確に述べられているかなとも思います。
また、構造構成主義自体を私が知ったのも約1年前でした。
柔整業界ではもしかしたら一番最初に構造構成主義を知り、勉強したかもしれません。
私自身は、当アカデミーの矢根克浩氏から教えていただくまで、存在すらも知りませんでしたから。
ただ、こういう理論がどういう経路であれ、柔整業界に入ってくることはとてもいいことなのかもしれません。欲望に歪められた知性が正しく不正解を導くのなら、口で綺麗事ばっか言ってるけれど、裏で「俺は300円の壺でも300万円で売る自身がある」などと豪語し、実際に患者さん、同業者を騙してビジネスをしている柔整師は、今現在がどうであったとしても、未来がないということは確実なのですから。
わからないことをわからないと伝え、自分より常に上の存在にフォーカスし技術も知識人間も高める努力をし続けていた、ベテランの先生、そして若くても誠実で素直で、そういう不誠実さに違和感を感じる感性を持っている先生こそ、未来に生き残っていくということが十分腑に落ちたのではないかと思います。

 

参考文献

「チームの力」西條剛央著
「構造構成主義とは何か」西條剛央著
「わかりやすい構造構成理論」岡本拓也著
「ブランド」岩田松雄著

 


投稿者: 正隆松村

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